りようしからりょうしへ。
ハサミを竿に持ち替えた、新天地での挑戦
大分県の北部、瀬戸内海にぽっかりと浮かぶ姫島。
島全域が瀬戸内海国立公園に指定されている豊かな自然が魅力の島で、30万年前の火山活動が生み出した地質学的魅力を残す地域として、日本ジオパークにも認定されている。
車エビの養殖で有名なのだが、四方が恵まれた漁場に囲まれた環境にあるため、たくさんの水産物を水揚げする漁船漁業も主要産業のひとつだ。
取材当日、何も関係のない話だが、姫島に行くとなぜか雨が降る。
この日も雨、しかも少し波が高い。村営のフェリーに乗って20分ほど揺られて姫島へ。
お昼前に到着したので、腹ごしらえに向かう。
車えびで有名なお店でランチをいただき、まずは舌先から姫島を満喫。
のどかな風景を楽しみながら…、
…仕事しなきゃ。
集合場所の姫島漁協に到着。取材は漁協のお部屋を借りて行った。今回の取材先は姫島で就漁した上岡勇太さん。少し小柄でたくましく、にっこり笑う笑顔が印象的な37歳。大阪府枚方市出身とのことだが、関西弁は全くでない。姫島に移住して一本釣りやひき縄釣りを行う、今はまだ駆け出しの漁師だ。
彼にとって、姫島は出身でも他に縁がある場所でも無いとのこと。
なぜ姫島に? なぜ漁師に? 質問には困らないので、色々と質問をぶつけてみた。
上岡さんは、自分の技術で勝負をする理容師という仕事が好きで、学校を出た後に全国でチェーン展開をしている理容室で10年間働いていた。毎日忙しく大変ではあったが、遣り甲斐は大きく、何も考えずにやみくもに働いていたのだが、周りの人が独立したり、キャリアアップしたりと、稼ぎ方や人生設計について考える姿を見て、年々もやもやとした気持ちが蓄積されてきたのだとか。
若い時はその時だけを考えれば良かったが、このままでは給料も増えず、理容師として独立するか、気持ちを抱えたまま安定を取るのか。葛藤の日々が続いたという。
当時の上岡さんの息抜きは釣り。釣り道具だけではなく、専用のボートまで持っているほどの入れ込みようで、この趣味があったからこそ、理容師を続けることができたのかもしれない。
ある日、夜中に何気なく漁師の生活に密着したドキュメント番組を眺めていた。ただ釣りや漁を観て楽しむつもりだったのだが、「技術で勝負する」という点で、漁師と理容師は同じなんだとひらめいた。理容師という職種が好きで、今ある環境の中で人生の選択をしていたのだが、自分が納得して働ける仕事に就くことが自分にとっての幸せなのだと気付き、もやもやが晴れ、あっけなく歯車が回り出す。
「漁師になりたい」。
決まると早いのが上岡さん。
新規就漁の情報をネットで調べ、当時広島在住の中、大阪で行われた就業フェアに参加。たくさんのブースで話を聞いた。
上岡さんが望んだのは独立して漁師をやること。しかし、フェアに参加していたのは水産会社が多かった。就農は独立するケースが多いのだが、就漁における独立は少ない。初期投資や指導環境などが整わず、独立型の新規就漁は選択肢が少なかった。数少ない独立支援をしてくれるブースの中から、さらに一本釣りができるブースを探し、たどり着いたのが姫島のブース。
姫島の漁師は独立して行う人が多く、その仕組みも独特。漁師が集まって船団を組んで県内あちらこちらの漁場に出向いて漁を行い、漁場に近い漁港で水揚げをする。大分県内では姫島と国東市だけが行っているこのやり方が上岡さんの心をくすぐり、ここでなら夢が叶うと、姫島で漁師を始めることにした。
就業フェアで話をしてからの流れはこうだ。
ブースでお話
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奥さんを連れて下見
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短期研修で姫島へ
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移住後、親方さんに弟子入りして研修開始
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3年間の研修を終えて独立
少しハードルがあるが支援は手厚い
・漁業体験は大分県から1/2の補助金が出る
・研修を開始して2年間は、国の支援を受け親方から給料をもらいながら働ける
・3年目は、国から研修費をもらいながら一人で漁に出て水揚げも収入になる
・独立に必要な漁船・漁具を整備する際に2/3の補助金が出る(補助金上限額は600万円)
初期投資に勇気が必要だが、一歩を踏み出す環境が今の就漁には整っている。
さらに、高齢化と気候変動で漁師と魚が減っていること、頑張ろうとする縁もゆかりもない若者を育てたいという地元の人たちの優しさも追い風になった。
前向きに挑戦を続ける上岡さんは、今では姫島漁師の若手のホープになった。
仕事以外のことについても聞いてみた。
漁に出ない時も道具の手入れなどで意外と自由な時間が少ないが、なるべく休みの日を充実させるようにしているという。今は奥さんと美味しいもの探しに出掛けるのが楽しみなのだとか。
姫島に来て良かったことは、漁師という職業の全般に言えることで、超体育会系のものをイメージしていたのだが、先輩漁師さんたちが優しく指導や世話をしてくれたことらしい。
元気に頑張る上岡さんは、今では島にいなくてはならない人になりつつある。
今後の目標についても聞いてみた。
「今はそこそこ稼げるようになってはきましたが、まだまだ先輩方の技術には遠く及びません。同じ環境で漁に出ても、水揚げは凄い方々の半分くらい。経験から来る勘やヨミ、そしてそれを実現する技術が凄いと感じます。経験を積み、勉強をして、稼げる漁師になりたいです」。
最後に、これから漁師を目指す人に向けてメッセージをもらった。
「自分は考えるよりも先に動くタイプだから言うのですが、どれだけ考えを巡らせても何も変わらないから、やってみることが大事だと思います。」
飛び込むから手放すことがあれば、飛び込んだからこそ見つけた新しい発見もある。
自分は○○だからと可能性に蓋をせず、何でも挑戦する上岡さんが、いつか姫島の漁業を変えるのかもしれない。
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