異業種で身につけたスキルで築く、
自分らしい農業経営
海の産業が多いイメージの佐伯市は、温暖な気候と豊かな土壌での早期米、トマト、イチゴ、ニラ、温州みかん、ポンカン、かぼすなどの野菜・果樹とキク、スイートピーなどの花きなどの栽培が盛んな場所。
今回は、ちょっと変わった経歴を持つ新規就農者を取材させてもらった。
お話の相手は令和5年に就農したハウスみかん農家の榎竜志さん。
朝10時からの取材だったのだが、この日は10月中旬にも関わらず30度くらいの気温。早朝からの作業で榎さんは取材時には既に汗だく…。取材前の第一印象から真面目な働き者の人柄はズンズンと伝わってくる。
ハウスの中は暑すぎるので、一旦倉庫に避難させていただき、榎さんの汗引き待ちで取材を始める。
榎さんは実家が農業をやっていた訳でも、農業系の就職志望が元々あったわけでもない。
わからないことが多いので、少し多めに質問を投げかけてみた。
1.農業をする前は何を?
高校や大学で商業、簿記、情報ビジネスを学んだ榎さんは、就職活動のタイミングで当然のことの様に自分の得意とする仕事を探す。しかし、人生には、どうすることもできない運やタイミングがあり、そのタイミングでリーマンショックが発生し、希望の職種で働く夢は断たれた(バブル崩壊後の筆者にとってすごく共感…)。
希望よりも何よりも、働き先を探し、やっとのことで就いた仕事は海上自衛隊。やりがいのある仕事だったが、嗜好とは違うため数年で退き、公共の水道施設のメンテナンス、福岡のマンション・アパートなどの水回りを中心とした施設管理と、なぜか水にまつわる仕事を渡り歩く。
ちなみに、金曜には自衛隊の習慣で、やっぱりカレーが食べたくなるのだとか(笑)。
2.なんで農業?
大分にいた頃、仕事先で会ったかぼす農家さんと話した経験から「農業という選択もアリかも」と思いながら福岡で生活をしていた折、目にしたのは福岡で開催されたイベント「就農就業応援フェア」の知らせ。
参加してみて、大分県の担当者と話をするにつれ、ぼんやりとした思いは、強い願望に変わった。
そこで学生時代の簿記やビジネスの勉強経験が役に立つ。確かにハウスみかんよりも儲かりそうな農作物もあったが、ワークライフバランスも重視する榎さんが注目したのが“時間あたりの生産性”。
その後も色々と調べて、ハウスみかんでの就農を決めた。
3.どのような経緯で就農?
大分県や市と話して榎さんは栽培技術を習得するため2年間佐伯市ファーマーズスクールに通うことにした。
座学などでも多くを学んだが、一番助かったのが、地元で活躍するハウスみかん農家に師事して、多くの実践的な経験ができたことだったとか。ファーマーズスクールでは、経営計画なども行政が一緒に考えてくれたことも助かったのだとか。
就農に際しての初期投資は、育てる作物と規模によって変わるが、実の話、そんなに安くはない。ただ、国策として 食料自給率の向上、 農家の高齢化による新たな担い手の確保、自治体の人口増加対策による移住促進などの側面から補助金等の助成制度があるが、大分県はひと際その支援が手厚い。
詳細な額は伏せるが、個人では到底スタートできない規模の農業も、これらの支援を活用し、開始することも可能になる。
また、支援制度を活用し、みかんのような植え付けから最初の収穫までに数年間を要する品目を栽培することもできるそうだ。
4.就農するにあたっての準備
何が必要なのか榎さんに聞いてみた。
「補助金や助成金があるけど、仕事上でも、個人の事情の上でも、ある程度の貯えを作って始めると、気持ちのゆとりができます。あと、お金の面でもそうですが、経験も貯金のようなものだと考えます。水回りの知識や経験、自衛隊で得た体力、好きで学んだ簿記や情報ビジネスなども、農地づくりや機械のメンテナンス、確定申告などの作業で役に立っています」との事。
榎さんが趣味で行っているプログラミングも、いつか農業を助け、引っ付いて、何か新しい産業を作る種になるのかもしれない。
矢継ぎ早の質問タイム終了。
榎さんはハウスみかんを仕事と捉えながらも、楽しんでやっているように見える。
5.農業を営む楽しみは?
「農地に来る度に、前に来た時とは違う。少しの変化を感じ、少しの不具合に注目して改善し、少しの成長を喜ぶ。ちょっとずつ何かが成長していることに立ち会うことが、なんだか楽しいんです」との事。
6.これから農業を始めようと考えている人へのメッセージ
どこまでも謙虚な榎さんは
「自分が大した人間じゃないからそうなのかもしれないが、植物を育てるぞと気合を入れて取り組んでも、植物そのものに意思があると思う。少しでも良いものにするために促すことはできるかもしれないが、最後は植物次第。ゆっくり自分のペースでやればいいと思います。
ただし、自分だけで考えても上手くいかないのが農業。先人の経験や努力を知り、先輩の話に耳を傾け、行政や地域の人に相談したりして、少しでも前に進めるように頑張っています。なので、地域や人付き合いは重要だと考えます。まだ何も持たない自分なので、釣りに行って、大きなブリが連れたら地域の人たちに持って行ったりしていますよ(笑)」。
2年後から収穫が始まるハウスみかんに先立って、来年の春には、露地栽培している「セミノール」という品種のみかんの出荷が始まる。鮮やかな赤橙色が特徴のこのみかんが、榎さんのデビュー作。
作って収穫して卸して知らない誰かに届く。会えないその人の笑顔を作り、感謝されるみかんを作ることが、また榎さんの探究欲をくすぐるのだろう。
地域には若い農家が少なく、榎さんが背負う役割も多いと聞いた。
ストレスを受けると果物は甘くなるそう。多くの苦楽を知識や経験、楽しむ力で乗り越える、榎さん自身も果物と同じように大きく成長していきそうだ。
大分県は経営計画の策定から営農開始後のフォローアップまで充実した体制で就農や企業の農業参入を支援しています。農林水産業の会社に就職したい人も大歓迎です。
詳しくは
農林水産業・就業総合サイト「おおいたで働こう」
https://nourinsui-start.oita.jp/
のイベント情報をご覧ください。
サイト内のメールフォームからのお問い合わせも随時受付中です。
また、大分県では農業に興味関心のある方等を対象に東京、大阪、福岡、大分で相談会を開催しています。
この相談会の情報は以下をご覧ください。
