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思い出詰まったミニトマト栽培で、
新しい感動づくり

荻町は大分県の南西に位置する標高500m程に位置する高原地域。2005年の市町村合併で竹田市と合併して自治体としての名前は無くなったが、当時から今に至るまで、トマト栽培で有名な名産地だ。

今回は、そんな荻町で育ち、おじいちゃんの作る美味しいミニトマトをおなかいっぱい食べて育った女性のお話。

9月上旬、取材の日。
大分市内は朝から30度を超える、うだるような暑さ。
大分県担当者と合流するため、竹田市荻支所へ。車を降りると大分市と比べて、気温は少し低いくらいだったが、常に程よい風が吹き、湿度がそれほどでもないせいか、体感的には過ごしやすい。

今回取材する冨髙綾さんの農園は、荻支所から10分とちょっと。のどかな荻町のさらにのどかな農村地帯。

ご挨拶をしてお顔や姿を見ると、まだ若く、どちらかといえば華奢に映るタイプだ。

美べジ彩園冨髙さん

正直、外見からは若い山登りを趣味とする女性に見えて、冨髙さん=農業という雰囲気は感じなかった。

話を聞いていくことにする。

美べジ彩園冨髙さん

元々冨髙さんの大好きだったおじいちゃんがミニトマトの栽培をしていて、子どもの頃はお手伝いをしながら、いつも新鮮で美味しいミニトマトを食べていたのだそう。
学生生活を終え、普通に就職活動を行って就職。何の疑問もなく就職し、何の迷いもなく働いた。
就職をして幾年かが経過し、それほど都会ではないが農地から離れた大分市での生活を行うにつれ、冨髙さんはおじいちゃんのミニトマトを思い出す機会が多くなったのだとか。その時はもうすでにおじいちゃんはいなくなっていたが、もしかするとその様なこともミニトマトへの想いを深くする材料になっていたのかもしれない。

美べジ彩園冨髙さん

おじいちゃんとの思い出はミニトマトへの想いに姿を変え、そしてついに「ミニトマトを栽培してみたい」という願望に姿を変えた。

ただ、付きまとうのは生活への不安。やりたいだけではできないからと、農業だけで生活できるのか、地元や知り合いの農家さんに話を聞いて、考え、計画を立てて、行けそうだなと目途が立った。

そして、40歳を手前に冨髙さんの想いは爆発する。

美べジ彩園冨髙さん

目指すテーマは3つ。
「おじいちゃんのミニトマトを復活させたい」
「美しい環境で健康なミニトマトを作り、みなさんの健康美容に役立つ」
「ミニトマトで生計を立てる」

農園の名前は、ミニトマトを作る側も食べる側も美しく健康になって欲しいと「美べジ彩園」にした。

人の幸せのカタチは決まったものではないのだが、笑顔が素敵でとても魅力的な女性。一人で頑張る以外にも違う幸せもあったのではないかと思い、深堀りして聞きたかったが、そこは初対面。色々と難しい時代でもあるので、少し控えめに聞いてみると…。
「農家を開業して気付きました。男手があった方がいいなと。誰かいたらお願いします!」と、満面の笑顔。
…カッコいい。冨髙さんは何よりもミニトマト栽培を優先して考えているようだ(笑)。

決断してすぐに農業大学校で農業について基礎から学び、おじいちゃんがやっていた場所でミニトマト農家を開業した。

とはいえ、たった一人で始める農業。不安がないのか聞いてみた。周囲の人の助けも不可欠で、大分県の支援が助けになっていると冨髙さんは語る。
「大分県豊肥振興局の方が栽培に関する指導をしてくれます。定期的に圃場の巡回に来てくれた時に、些細なことから何でも質問や相談ができるので助かっています! 補助金や融資を受ける際には支援なども行ってくれるので、心強いです。また、大分県が主催するおおいたAff女性ネットワークに加入していて、様々な研修会を企画してくれるので勉強になっています。その時にと知り合った色々な方と話をすることで、意識を高めることも安心することもできますね」とのこと。 ※おおいたAff女性ネットワーク
大分県で農林水産業に携わる女性が、交流活動や勉強会を通じてつながることでお互いの取組から学び合い、夢や希望を実現する力をつけ、経営発展や地域活性化に繋ぐための活動の場。
『Aff』は、Agriculture(農業)・Forestry(林業)・Fisheries(水産業)の頭文字からとった愛称

美べジ彩園冨髙さん
美べジ彩園冨髙さん

初年度は10a(アール)、300坪でスタート。収量は9t。初めてのことなので、毎日が緊張と疲労の1年。
課題を見つけては改善点を考え、毎日コツコツと知識と経験、工夫を積み上げた。
だんだんとスムーズな立ち回りができるようになり、経営の更なる安定化を図るため、今年から栽培面積を20aに拡大することに。
今は父親、母親、妹、叔父などのフォローを受けての作業だが、今後はまだ見ぬご縁や外国人雇用までを含めて、雇用も作れる発展的な農園にしていきたいのだとか。
単純に収量を増やすという発想も大事だが、考えているのはクオリティと単価を上げながら行う省力化。来る日も来る日も記録を取り、導線を考え、時短への取り組みを模索する。冨髙さんはいつも自分自身にミッションを課していくタイプなのだろう。

美べジ彩園冨髙さん

現在出荷は全量JAだが、自分が作ったミニトマトを顔が見えるお客さんに買って欲しいという願望もある。余裕ができれば近くに出荷したり、観光農園のように訪れてもらったりしていく未来を作りたいのだとか。

冨髙さんは農業だけではない幅広い視野を大切にしようとしているように感じる。会社員としての経験が決してミニトマト栽培参入への単純な遠回りにはなっていないようだ。

日々の楽しみや大変なことについて聞いてみた。

楽しみは
・自分の判断で仕事ができること
・ゴルフなどでの先輩農家さんたちとの交流
・旅行
元々旅行が好きだった冨髙さんは、今年のシーズンオフに久しぶりに旅行に行くのだとか。家族にご縁がある人がいるとのことではあるが、行先はなんと南アフリカ。しかも10日間。シーズン中は必死に働き、オフシーズンは豪快に遊ぶ、さながらプロスポーツ選手の生活。

大変なことは
・シーズン中には休みがないこと
・天候のリスク、出来栄えなどが気になり、完全には気が休まらないこと

あと、目指すテーマがひとつ追加になったようで
「トマトの名産地荻町の先輩農家さんたちに早く追いつきたい」
とのこと。

美べジ彩園冨髙さん

最後に、今後農業を始めたいと考えている女性へ、メッセージをいただいた。

「自分が食べたいものを作る楽しさと、女性がやっているというだけで、男性がやるよりはまわりの人が優しく接してくれますよ(笑) 体力的なハンデはあるけれど、女性には細かい作業が得意な人が多く、特にミニトトマトに関しては小柄な方がやりやすいのかも」
また、「竹田市では、トマトやミニトマトの栽培技術を習得できる研修制度もあり、新たに農業を始める方の支援も充実しています。一度“地域体験型インターンシップ”を活用して荻町で農業を体験してみることをオススメします」と語った。

栽培したミニトマトを食べさせていただいた。一番美味しいと言われる時期よりは少し早いが、噛むと強い弾力を感じ、弾けると程よい甘みと香りが溢れ出す。これは美味しい。

一年後の冨髙さんはどんな感じなのだろう。冨髙さんの思い出の味にたどり着けるのだろうか。 今後も、近くに行くことがあれば、ちょっと覗いてみようと思う。

あまりお仕事の邪魔はしませんので、よろしくお願いします。


大分県は経営計画の策定から営農開始後のフォローアップまで充実した体制で就農や企業の農業参入を支援しています。農林水産業の会社に就職したい人も大歓迎です。

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